「あっ!」
アルマくんが、箱のそばで足を引っかけました。
手にしていた財布が床に落ちます。
ぱかっ。
中からお札が散らばりました。
そして、そのうち何枚かが、ふたの開いていた箱の中へ。
アルマ:「あっ、待ってください! 入りました!」
わると:「ちょ、箱! 箱に入ったで!」
ワルマ:「何枚ですか。見えませんでした」
あると:「……入りましたね」
アルマ:「どうしましょう。何枚入ったんでしょう」
わると:「とりあえず箱、数え直そ!」
いくら入ったか、見ていなかった
この箱には、さっきまで120万円入っていました。
100万円で商売を始めて、全部終わって、最後に120万円残った。
前の散歩では、そこまでを眺めました。
ひとつ前の散歩
では、いまはいくらあるのでしょう。
箱のおカネを数え直します。
125万円。
アルマ:「125万円……」
ワルマ:「直前は120万円でした。差は5万円です」
さっき、何枚入ったのかは誰も数えていませんでした。
それでも、5万円入ったと分かりました。
なぜでしょう。
入る前に、120万円だったと知っていたからです。
125万円という今の数字と、120万円という少し前の数字。
その二つを比べたから、5万円増えたと分かりました。
同じ「増えた」なのに
わると:「前と同じように考えたら、100万円から25万円増えた。25万円もうかったことになるんか?」
ワルマ:「最初と最後の箱の金額だけを比べるなら、25万円増えていますね」
アルマ:「でも、そのうち5万円は僕の財布から入っただけですよね」
わると:「……せやった」
箱のおカネは5万円増えました。
でも、商売で5万円もうかったわけではありません。
商売は、さっきから何もしていません。
ただ、アルマくんの財布のおカネが、箱に飛び込んできただけです。
前の散歩では、
100万円から120万円。
おカネが20万円増えた。
商売でも20万円もうかった。
この二つが、同じ答えになっていました。
今回は、初めてずれました。
どのお札だった?
アルマ:「ところで……僕のおカネ、どれですか?」
わると:「さっき入ったやつやろ」
アルマ:「どれが『さっき入ったやつ』です?」
わると:「……分からんな」
箱の中では、もともと入っていたお札と、さっき財布から入ったお札が混ざっています。
5万円入ったことは分かる。
でも、どの5万円だったのかは、もう見分けられません。
箱の中を見ても、さっき何が起きたのかまでは分かりません。
もちろん、このあと5万円はアルマくんに返します。
数字の後ろに、何があった?
前の散歩では、箱を開けて最後のおカネを数えれば、それだけでかなり分かりました。
今回は、箱を開けて数えること自体はできます。
125万円。
でも、その数字だけでは、どうして125万円になったのかまでは分かりません。
わると:「ほな、金額だけ見ても足りんってこと?」
あると:「今回は、そうですね」
箱の中のおカネは、みんな同じ顔をしています。
それでも、
商売で増えたおカネと、
外から入ってきたおカネは、
同じ意味ではありません。
前の散歩では、「いくら増えた?」だけでよかった。
今回は、そこにもう一つ。
「どうして増えた?」
という問いが加わりました。
どうやら会計は、金額だけではなく、その後ろで何が起きたのかも見ているようです。
少しだけ、見るものが増えました。
今日は、その違いが見えたところで、散歩を終えましょう。





お〜…なんとなんと!難しいこと一切なく、P/LとB/Sの入り口に連れていかれたように思います。